黒の貴婦人
社交界を去る前に、あなたと一夜の想い出を作りたい――たとえ正体を隠してでも。ゴールデン・ハート賞受賞作家J・ジャスティスの名作ヒストリカル
16歳の男爵令嬢カーラはひと目でブランソン卿に恋をした。地味で平凡な彼女にとって彼はアポロ神そのものに見えたのだ。6年が過ぎた今、二人は信頼で結ばれたよき友人関係を築いている。社交界デビューが決まった日、カーラはひそかに心を躍らせた。私を女性として見てもらえるチャンスがきたわ。ところがブランソン卿はカーラをダンスに誘い、情熱的に唇を奪ったものの、相変わらず友人としての関係を崩そうとはしなかった。落胆したカーラは、奔放な妹から授けられたある秘策を実行した後、黙ってロンドンを去る決意をする。