赤い髪の淑女
1746年スコットランド、エディンバラ港。令嬢は旅に出た――ある悲壮な決意を胸に。
「お客さんだよ、船長。女のお客さんだ」部下の言葉を、コリンは一蹴した。 この吹雪のさなかに女の客人などありえない話だ。冗談で応じていると船室のドアがあき、美しい女性が姿を現した。上質のウールのフードからのぞく赤毛が、天使のような顔を縁取っている。彼女は素性を明かさず、フランスへ連れていってほしいと懇願した。コリンは強く興味を引かれながらも、何もきかずに渡航の手配を引き受ける。その時のコリンは知る由もなかった。彼女が背負った運命の重さを。そして、彼女と出会った瞬間に、最後の恋に落ちたことを。