キャヴェンドン・ホール 美しい約束 下
平民の娘と伯爵家の嫡男を繋ぐ秘めた愛──貴族の時代の終焉とともに、格差の壁が崩れ始める。セシリーの想いは届くのか?
英国に恐慌の不穏な空気が忍びより、没落する貴族も出始めた。時代は変わり、インガム家でも史上初めて身分差を超えた婚姻が結ばれた。セシリーの大叔母は変わらぬ忠誠心と深い愛で夫となった伯爵を支え、伯爵の娘たちもそれぞれに真実の愛を見つけ、束の間キャヴェンドンは婚約披露や結婚式に花が咲いた。輝くばかりの婚礼衣装はすべてセシリーの手によるものだ。花嫁のヴェールを直してやりながら、セシリーは涙を押し隠した。マイルスへの想いは変わらないが、彼との結婚は叶わない──セシリーの愛だけは、不毛なままなのだった。