ボディガードは一人だけ
狼たちの休息 ⅩⅩⅢ
狼たちの休息 ⅩⅩⅢ
ビク・ノーブルは、その女性を一目見て、茫然と立ちすくんだ。ほほえみながら近づいてくる彼女に、息も止まりそうだ。「わたしがペニー・スー・ペインです」ボディガードのビクは、任務を引き受けたことを心底後悔していた。億万長者の遺産相続犬の警護を、後見人のペニー・スーから依頼され、警備会社が人手不足を理由に、彼に無理やり押しつけてきたのだ。代わりが見つかるまででいいからと。いつ見つかるかわからないのに。さらに悪いことに、ビクはペニー・スーに一目でまいってしまった。だが、一夜限りの関係など求めたら、当然結婚を迫られるに違いない。そんな高い代償はまだ支払いたくはない。ビクにはわかった。この任務は地獄の試練となるだろうと……。