本書が指摘する従来型マーケティングの誤り
- 誤)アンケート上の顧客の属性(年齢や性別、年収)が、商品購入と関係があるものだと思い込んでしまう
- 正)⇒顧客が置かれた状況が商品購入の鍵となる
- 誤)人は優れた製品を買う
- 正)⇒顧客は、現状から進歩し、自分がやりたいことをするために製品を購入する
- 誤)製品の機能が差別化の源泉である
- 正)⇒顧客は製品から感情的・社会的な満足を得たいことが多い
本書で読者が得られること
- ■付加価値の高い、商品やサービスの企画方法
- ■顧客の記憶に残るブランドの構築法
- ■潜在的なニーズを発見する視点
- ■顧客価値の高い組織づくり
- ■マーケットデータに振り回されないマーケティング戦略
本書で語られる「ジョブ理論」とは?
ビジネスをしている人なら誰でも「ニーズ」という言葉には馴染んでいるだろう。では「ニーズ」を説明したり、「ニーズ」を予測することはできるだろうか?世界で最も影響力のある経営学者の一人であるクリステンセン教授は、「ジョブ理論」によって「ニーズ」とは何で、消費者のニーズをどのようにとらえるのかを解明した。
消費者が商品を買う際には、何か目的があるはずだ。つまり、消費者はやり遂げたい「ジョブ」があり、そのジョブを解決するために商品を“雇用”しているとクリステンセンは説く。そのジョブが発生する状況こそが商品購入の鍵となる。
あるファーストフード・チェーンの抱える問題 どうすればミルクシェイクがもっと売れるか
従来どおり、企業がアンケートデータの顧客属性に基づき通勤者や父親たちの反応を平均化しようとしただけなら、顧客の「ニーズ」に応えることはできない。大切なのは顧客にその行動をおこさせた原因、すなわち「片付けたいジョブ」なのだ。
ファストフード・チェーンがミルクシェイクをもっと売りたいと考えた場合に、探す方法はひとつではない。
その他、本書で取り上げられている主な例
- ■フェイスブックとタバコは実は同じ理由で“雇用”されている
- ■ジョブのレンズを通して見た時、マーガリンのライバルはバターではない(ユニリーバ社)
- ■エアビーアンドビーは“無消費”を発見し、有名ホテルグループの売上を凌駕するビジネスへと発展した
- ■キンバリー・クラーク社の熟年向け○○○が大ヒットした理由
- ■P&Gはどうやって中国市場に紙おむつを売り込んだのか など
推薦コメント
アマゾンのジェフ・ベゾス、そしてかつてはアップルのスティーブ・ジョブズやインテルのアンディー・グローブがクリステンセンの慧眼に忠実なのには意味がある。クリステンセンは、単に過去のイノベーションを分析し、パターンを抽出するだけでなく、その根幹にあるメカニズムを解明する。本書は、人がモノを買う行為そのもののメカニズムを解説したものだ。
失敗しない商品開発を目指すばかりにデータを後追いした結果、際立たない商品を世に送り出してしまう過ちを犯しがちだ。実際、市場には低価格でしか訴求できない商品が溢れてしまっていないだろうか。ジョブ理論を理解・活用することが、あらゆるビジネスに有効であることはInnosightや私たちの経験からも自信を持って言うことができる。
<共同執筆者>
タディ・ホール
ケンブリッジ・グループのプリンシパルで、ニールセンのブレークスルー・イノベーション・プロジェクトのリーダーを務める。こうした立場で、企業の経営陣に対し、新しいプロダクトを成功させ、イノベーションのプロセスを改善する支援をおこなっている。また、〈エンデバー〉および〈イノベーション・ウイズアウト・ボーダーズ〉のアドバイザーとして、新興市場の経営陣に緊密な指導を提供している。
カレン・ディロン
ハーバード・ビジネス・レビュー誌の元編集者。ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー『イノベーション・オブ・ライフ』の共著者のひとり。コーネル大学およびノースウエスタン大学メディル・ジャーナリズム学院卒業。2011年、アショカ財団によって、世界で最も影響力のある女性のひとりに選出されている。
デイビッド・S・ダンカン
イノサイト社のシニア・パートナー。イノベーション戦略および成長に関する先進の研究者およびアドバイザーとして、企業経営者に対し、破壊的変化を導き、持続可能な成長を生み出し、組織を長期的な繁栄が可能な体質に変換する指導をおこなっている。デューク大学卒、ハーバード大学で物理学の博士号取得。
株式会社INDEE Japan
(クリステンセン教授のコンサルティングファームInnosightの日本提携パートナー)
代表取締役 テクニカルディレクター 津田 真吾