美しい美貌を隠して令嬢付添人をしているアニスが伯爵のアダムと出会い、シャペロンの仕事と愛に揺れる中での紳士のアダムの求愛は、ロマンス好きにはたまらないシーンです。スターベックの地所をめぐる隠された真実を探っていくドキドキと、二人の愛のゆくえのドキドキの先が知りたくって一気に読みました。

アダムのアニスに対する情熱的な想いとは裏腹の紳士的な振る舞いには、誠実さが伝わってきます。シャペロンとして世話をするお嬢様たちに対する気苦労や、最後にどんでん返しがあったりと、ロマンス以外のストーリーも楽しめました。この著者の作品を初めて読みましたが、これを機に別の作品も読みたいと思います。

腕利きのシャペロンであるアニスは結婚というものにすごく臆病になっており、伯爵アダムの求婚になかなか応じようとしないのがなんだかすごくもどかしく、好きならそのまま結婚してしまえばいいのに……でもそんな事があったならなあ～とも思い直し、気づくとアニスを心の中から応援している私がいました。

ヒストリカルの令嬢付添い人の恋愛物語なので、非日常的な設定ですが、そこれゆえ日常を忘れ、物語の中に入り込むような感覚で楽しめました。仕事と家を守るため、また過去の結婚生活のトラウマにより美しい美貌を隠して生活するアニスとそれをするどく見抜くアダム。アニスのいとこの苦しい立場。様々な登場人物が恋愛はもちろんですが、仕事や家を守るいろんな愛が詰まった物語だなと思います。

うぶな未亡人と大人な伯爵とのやりとりがとても面白かった。未亡人といっても恋愛経験はなく、素直になれないヒロインを難なく言葉で丸め込んでいくヒーローが好感度MAX。両家一丸となって結婚へ向かって口出ししていくというのはヒストリカルでは珍しいかなと……。悪役は悪役らしくてとっても嫌な奴二人が巻き込まれるゴタゴタにはハラハラさせられましたが、すっきりと読み終われました。

仕事のために敢えて美貌を隠しているヒロインと放蕩者と思われているヒーローの恋愛物と思ってたのですが、それだけではありませんでした。領地問題に絡むいろいろな事件やヒロインの過去の心の痛みなど、さまざまな出来事が盛り込まれていました。ハーレクインのヒストリカルはほとんど読んだことがなかったのですが、とてもおもしろかったです。