街を歩けば雪や天使をモチーフにした飾り付けを目にしたり、クリスマスソングが聞こえてきたりと、心弾む季節となりましたね。 今回ご紹介するのは「聖なる夜の物語―あのクリスマスをもう一度」に収録されている、エリザベス・オーガスト作「永遠の贈り物」という物語です。過去の経験から決して人に心を開こうとしないヒロインでしたが、老婦人と少女の画策によって宿り木の下に立たされてしまいます。そして気になってはいるものの踏み込めない男性とキスをすることになるのですが…。 さて皆さん、宿り木という木をご存じでしょうか?英名はMistletoe(ミスルトゥ)。ブナなどの落葉樹に寄生して成長します。蔦を広げて球状になることが多いのがユニーク。冬でも緑の葉が楽しめることから、西洋では昔から生命のシンボルとされてきました。 欧米で一般的なクリスマスのオーナメントに、宿り木等をボール状に整えてリボンをあしらった“KISSING　BALL”と呼ばれるものがあります。そしてこの下でキスをしたカップルは結ばれると言い伝えられています。国や風習によってニュアンスは異なり、宿り木の下に女性がいるのにキスをしないと良くないことが起こる、若い女性がキスをしてもらえないと翌年結婚できない(!?)、恋人同士が宿り木の下でキスをするのは結婚を意味する等など。「ハリーポッターと不死鳥の騎士団」にも、ハリーが女の子とキスをするときにこの宿り木が2人を囲むように生えてくるという印象的な場面があります。 今回の作品の中でも「赤いリボンで束ねた緑の枝の下にいる女性にはキスをしてもいいというクリスマスの飾り」が登場し、上段でご説明したようなシーンが繰り広げられます。 日本ではあまり馴染みのない風習ですが、今年の冬はこんなオーナメントで部屋を飾りつけてみるのはいかがでしょうか。宿り木の下でのキスの魔法がどんな結果になったのかは……文庫でお楽しみください。