「ジュディ・ランハム」。この名前がもらたした運命のいたずら。一目で恋に落ちた二人はお互いの秘密を胸に秘めたまま結婚し、半年というビダスの余命の、一日一日を本当に大切に、愛し合って過ごした。そのうっとりするような幸せな描写と、秘密を口にすることができない苦悩にハラハラしながら、一気に読んでしまいました。ビダスの幸せな日々を何としてでも守りたいというジュディの強い気持ちが運命を大きく動かしていく後半は、もう目が離せませんでした。一途に愛する力の強さを感じることができる一冊です。

ヒロインの陥っている理不尽な境遇に、最初は怒り心頭でした。しかし、運命の人がついに現れた時にそんな嫌な気持ちは吹っ飛びました。ヒロイン同様、相手の男性がきらきら輝いて見えました。また、結ばれた2人が巡る島々の、豊かな極彩色にうっとりします。一緒に旅行しているようです。波乱万丈、異国情緒にあふれた、大人のおとぎ話。ロマンティックな気持ちとせつない心、旅行気分にも浸れる良作でした。

初めはリアルさにかける設定にあまり入り込めないでいましたが、ギリシャの島々の美しい風景の描写が、残された時間を美しい思い出にしようとする、二人のお互いを愛し思いやる気持ちの美しさとリンクし、涙してしまいました。嘘がばれてしまった後の男性の反応が、よくある誤解もののそれではなく、静かな悲しみを感じさせる態度だったのが、死を意識した人の達観のようで辛くなりましたが、最後はハッピーエンド!　ただ、後半の部分が駆け足すぎた気がして少し不満です。